読書感想文:『カノジョの妹とキスをした』2巻【書評・ラノベ】
『カノジョの妹とキスをした』2巻はどんなラノベ?
GA文庫公式サイトより引用
晴香ちゃんという恋人がいるにも関わらず、その妹の時雨ちゃんとキスしてしまった主人公・博道くん。時雨ちゃんを性的に意識せずにいられなくなるも、恋人に誠実であろうと必死に抗う。
98点 ★★★★★★★★★☆
↓1巻の感想はこちら
『カノジョの妹とキスをした』2巻を読んでみた!(※ネタばれあり)
このお話のヒロインって、最初から時雨ちゃんだけですよね。
三角関係じゃなくて、時雨ちゃん一択なわけです。
だって1巻も2巻もカバー絵だし。
じゃあ晴香ちゃんとは何者なのかというと、当て馬ということになります。
あて-うま【当て馬】
優勢な者を牽制する目的で推し立てられた者。
(Google辞書)
つまり、時雨ちゃんを引き立てるためのヒール役です。
いいヒール役がいる物語は面白いです。「いいヒール役」っていうのは、バットマンのジョーカーみたいに非情なバッドガイのことでも、フリーザ様みたいに絶望をもたらす圧倒的強者のことでもなくて、読者が嫌悪する対象のことです。
例えば『ありふれた職業で世界最強』が面白いのは、主人公ハジメくんの壮絶な冒険や、ヒロインたちの可愛さはもちろんなんだけど、あのクラスメイトの勇者くんが「自分本位な無自覚クソ野郎」であることがすごく大きいわけです。あのクソ野郎が自業自得で堕ちていく描写によって読者にもたらされるカタルシスは強烈で、私は勝手にラノベ史上最高ヒール認定しています。
2巻の晴香ちゃんは、あの勇者くんにも匹敵する超絶ヒールでした。
晴香ちゃんの無自覚地雷ポテンシャルは、1巻でもその片鱗を見せてましたが、この2巻ではより明確に読者の嫌悪対象として描写され、ヘイトを一手に引き受ける大活躍。
[kindle 55%]夜の海でのディープキス拒絶エピソード最高です。相対的に時雨ちゃんが、主人公の(じつは読者の)心情に寄り添う女神に感じられる構造です。
晴香ちゃんのヒールっぷりがリミットブレイクしたことによって、この2巻はすでに完璧だった妹キスワールドをさらに捻じ曲がった背徳的快楽世界に昇華させてしまいました。
[kindle 71%]の水風呂エピソード! これほんとやばい。
水風呂自体も退廃的な名場面だけど、なんといっても一番の見どころは、博道くんが晴香ちゃんからのスマホ着信を無視するところですよね! 水風呂の楽園感との対比で晴香ちゃんの着信がひどく邪魔臭いものに感じられる描写がやばい。博道くんの面倒くさい気持ちにシンクロして、低俗な私なんてもう満面の笑みで「この男やりやがった!」と大はしゃぎ。背徳カタルシスで脳みそ溶けちゃうよおぉ。。。
畳みかけるように電話シーン。
耳元で時雨ちゃんに囁かれて、電話相手の晴香ちゃんの声がだんだん途切れ途切れになっていくところとかもう芸術。
ということで、最高だった1巻を軽々と超えてきた妹キス2巻。
MVPは、晴香ちゃんでした。
プロレスでも言いますよね。ヒールにはブーイングこそがご褒美だと。
晴香ちゃん最高!
大嫌いです!(誉め言葉)