読書感想文:『異世界料理道』1巻【書評・ラノベ】

2023年1月23日

『異世界料理道』1巻はどんなラノベ?

HJノベルス公式サイトより引用
あらすじ

定食屋の息子・明日太が異世界転生した先は深い森の中。野獣ギバに襲われているところを、森辺の少女・アイ=ファに助けられ、訪れたのは「料理」という概念すら無い集落だった。

鮪田スコア

86点 ★★★★★★★★☆☆

『異世界料理道』1巻を読んでみた!(※ネタばれあり)

さながらオープンワールドのRPG

まるで、世界をまるごとひとつ作っちゃったみたいな。

さながら、オープンワールドのRPGです。
お料理無双も、人間ドラマも熱い『異世界料理道』だけど、この物語が持つ迫力の根底にあるのは、独創的なオープンワールドの作りこみでしょう!

そもそも、ふつう異世界って言ったら、中世ヨーロッパふうの城下町を舞台にした、魔法の世界じゃないですか。

↓こんなかんじの

『無職転生』『このすば』『リゼロ』『転スラ』 みんなそうです。

そういう「ドラクエ的な世界」をみんな大好きだし。あと、作家さん的にも、世界観の前提があれば、キャラストーリー作りに専念できる、っていうのも大きいですよね。

そういった常道に反して、『異世界料理道』の世界は、めっちゃです。

森に生き、森に死ぬ、森辺の民たちが暮らす、独自の文化を持った集落が緻密に創造されています。
世界をゼロから生み出すっていうのは、『アバター』『ハリーポッター』と同じくらい価値あることです!

変態的な、世界の作りこみ度

『異世界料理道』の世界の作りこみは尋常じゃない!
この世界のルールや常識、生態系、地形、気候、生活様式、使われている道具、宗教や歴史まで、全部ゼロから創り出されています。
気が遠くなるような緻密さです。

何よりも、食材へのこだわりと言ったら!
『異世界料理道』の世界に存在する食材には、それぞれ独自の名前が付いてるじゃないですか。

「ギバ」「アリア」「ピコ」「ポイタン」「タラパ」「ティノ」………

いやいや……
このテンションで、今後登場する食材ぜんぶに名前が付くの…?
え、それもう天地創造レベルの話じゃないですか。
もうひとつの地球みたいなことじゃないですか。

ちょっとこわい。。。
精巧に作られた人形に魂が宿ってしまうみたいな怖さ。

ぶっちゃけ尊敬を通り越して、作者さんの変態的執着すら感じます!

行間から感じられる「匂い」

『異世界料理道』の世界は、独創的なだけじゃなく、なんというか濃密印象深いです。

その秘密は、「匂い」の描写が多いからです。

草木の匂い。
集落の匂い。
家の中の匂い。
お料理の匂い。
そしてもちろん、アイ=ファの匂い!クンカクンカ

嗅覚情報が人間の情緒に与える影響の大きさは有名ですが、文章の匂い描写にすらその効果があるというのは発見です。

まとめ

作者さんの偏執的な世界の作りこみによって、のエネルギーを、そしてそこに住む森辺の民のエネルギーを、生々しく感じられる重厚なラノベでした。

単純に「世界観が細かいね」というレベルの話じゃなかったです。
作者さんのこだわりが生み出したのは、森辺の民たちが本当にその世界で暮らし、笑ったり泣いたりしていることに読者が共感できてしまう説得力でした。

かんたんに言うと、読者が森辺の民の在り方を好ましく思い、
アイ=ファの清廉な生き方を大好きになる、ってことですね。

アニメ化もしてほしいけど、やっぱりゲーム化されたらうれしい!
VRアイ=ファをクンカクンカして蹴られたい清廉な森辺の民となって、集落でまったりスローライフしたいです。
ギバ獲ったど~~~