読書感想文:『経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話』1巻【書評・ラノベ】

2023年3月17日



『経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話』1巻はどんなラノベ?

ファンタジア文庫公式サイトより引用
あらすじ

罰ゲームの告白でお付き合いすることになった、陰キャのリュートくんとギャルの月愛ちゃん。恋愛観に大きな違いがある二人が、お付き合いする中で少しずつ心を通わせていく。

鮪田スコア

83点 ★★★★★★★★☆☆

『経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話』1巻を読んでみた!(※ネタばれあり)

「凡庸な主人公が、美少女に好かれる」
多くのラノベが扱ってるこのテーマにおいて、着目したいのは「Why」です!
つまり、「どうして」美少女は、凡庸な主人公を好きになったのか。

そもそも、どうしてラノベに「凡庸」「オタク」「陰キャ」の主人公が多いのかというと、一般読者が共感しやすいからですよね。明朗快活なイケメンが美少女に好かれても面白くないので。

では、作家さんたちは、どうやって美少女凡庸な主人公に好意を寄せる理由を作り出しているのでしょう?

そこで、私が今まで読んだラノベから、代表的な美少女凡庸主人公に好意を寄せる理由」3つピックアップしてみました。

さっそく、紹介します!



美少女が、凡庸主人公に好意を寄せる理由3選

美少女が凡庸主人公に好意を寄せる理由 その1
「ピンチを救われたから」

【作品例】
『陰キャの僕に罰ゲームで告白してきたはずのギャルが、どう見ても僕にベタ惚れです』
『君に恋をするなんて、ありえないはずだった』
『クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった』

近年のトレンドは「暴漢から救う」みたいなあだち充的な派手なのじゃなく、ピンチ自体は些細なきっかけみたいなパターンが多いみたいです。「ふうん、やるときはやるじゃん」みたいな。

美少女が凡庸主人公に好意を寄せる理由 その2
「幼なじみだから」

【作品例】
『ねぇ、もういっそつき合っちゃう?』
『親友歴五年、今さら君に惚れたなんて言えない』

元も子もないですが、昔から知ってた好意を寄せても仕方ないなと思わせる説得力あります。「あいつの面倒は私が見なきゃ」とかです。広義では、兄妹もこのカテゴリーに含まれます。

美少女が凡庸主人公に好意を寄せる理由 その3
「過去の男がクソだったから」

【作品例】
『経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話』
『ひげを剃る。そして女子高生を拾う』
『ただ制服を着てるだけ』

さて、ようやく今回紹介する『経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話』のパターンです。

美少女が過去に出会った男たちがクソだったから、相対的に主人公が「いい人」認定される。これはすごい仕掛けですよ!

何がすごいって、前述の2つの理由と比較しても、主人公に求められる素養が最小限で済みます。
あえて極端な言い方をすると、何もしなくていいので、より主人公の凡庸性が守られるのです。

美少女のピンチを救う機転も不要。美少女の兄として生まれる運も不要。
普通に誠実でさえあれば、美少女は「キミは今までの人たちと違うね」って言ってくれる。なんてコンビニエントなんだ。

ただし、このパターンの主人公には、大きな試練が待っています。
それは……えっちを我慢しなきゃならないことです!

元カレがクソだったヒロインというのは「男ってみんなそうなんでしょ」諦観し、やたら主人公にえっちさせようと仕掛けてくるものなのです!

この『経験済み~』でも、ヒロインの月愛ちゃんが主人公・リュートくんを相手に、平然とえっちしようとするシーンがあります。
月愛ちゃんは無自覚ですが、それはひどく痛ましいことです。

月愛ちゃん自身も気付かない心のささくれを、リュートくん普通感覚が優しくケアしていくところがこのラノベの素敵なところです。
主人公が凡庸であることに、ちゃんと意味があるラノベでした。

まとめ

以上、本作を「美少女が凡庸主人公に好意を寄せる理由」から考察しました。

がんばれ、リュートくん
そのえっちを我慢した先にあるのが、「ラノベ主人公」だ!