読書感想文:『カノジョの妹とキスをした』3巻【書評・ラノベ】

2023年2月9日

『カノジョの妹とキスをした』3巻はどんなラノベ?

GA文庫公式サイトより引用
あらすじ

義妹・時雨ちゃんとの同居生活も、はや3か月。それでも晴香ちゃんとやり直したい博道くん。姉にバラすと脅迫する時雨ちゃん。そんな折、晴香ちゃんが家に遊びに来たいと言い出す。秘密の同居がバレてはいけない。

鮪田スコア

92点 ★★★★★★★★☆

『カノジョの妹とキスをした』3巻を読んでみた!(※ネタばれあり)

前巻の感想では、晴香ちゃんにフォーカスして書かせてもらいました。
読者の嫌悪を一手に受ける超絶ヒール説。

↓これです。

3巻では、妹の時雨ちゃんを掘り下げ、
姉妹が構築している「いもキスワールド」の魅力を考えてみます。

時雨ちゃんの魅力を作る、4つの「ポジション

読者はなぜ、時雨ちゃんに魅力を感じるのか。

「小悪魔」「肉感的」「なのに聖母」といった、キャラ造形の素晴らしさもありますが、
それより何より、時雨ちゃんの「ポジション」にこそ秘密があります。

主人公・博道くんから見た、時雨ちゃんはどういうポジションかというと

①「義妹である」
②「周りには秘密の同居人である」
③「彼女がいるのに好意を持ってしまった相手である」
④「彼女の妹である」

つよつよプロフィールです。
ふつう、どれか1個あれば、十分いかがわしい物語になるでしょう。
それが4つも!
いかがわしさの権化!!

この4つのポジションが、時雨ちゃんを、不道徳で、背徳的な存在に昇華しています。
言い換えれば、時雨ちゃんと付き合うことは、社会的に「良くない」ことなのです。

社会的に良くないというのは「抑制」であり、抑制こそが感情をブーストするものであり、ダメだダメだと思うほどに、時雨ちゃんを求めてしまうのです。
「博道くんが」じゃなくて、「読者が」!

時雨ちゃん望み叶ったとき、物語の魅力は消える?

さて、背徳的な立場こそが、時雨ちゃんの魅力の秘密だとしたら、それが無くなったとしたら?

つまり、博道くんが全てを晴香ちゃんに正直に話し、晴香ちゃんが素直に身を引き、博道くん時雨ちゃんが世間公認の恋人同士になったら、この物語はどうなっちゃうんでしょう?

姉妹の反応をシミュレートしてみましょう。

晴香「博道くんと時雨が義兄妹になって、一緒に住んでるなんてびっくり!」
晴香「えっ、あたしより時雨を好きになっちゃったの!? ショックだよ!!ぴえん」
晴香「悲しいけど、二人を祝福するね!」

こんな「きれいな晴香ちゃん」見たくない!!

時雨「これからは、人目を憚らずにデートできますね。おにーさん」
時雨「みんなが私たちを祝福してくれてうれしいです」
時雨「すごく幸せです」完

こんな「大団円」いもキスじゃない!!

まとめ

晴香ちゃんは、「無自覚地雷」であってこそ輝き、
時雨ちゃんは、「イケナイ存在」であってこそ魅力的である。
という事実の再確認。

姉妹の相乗効果で生まれる背徳感を、ますます堪能できた3巻でした。
心の「永遠に覗いていたい修羅場」第1位!