読書感想文:『カノジョの妹とキスをした』3巻【書評・ラノベ】
『カノジョの妹とキスをした』3巻はどんなラノベ?
GA文庫公式サイトより引用
義妹・時雨ちゃんとの同居生活も、はや3か月。それでも晴香ちゃんとやり直したい博道くん。姉にバラすと脅迫する時雨ちゃん。そんな折、晴香ちゃんが家に遊びに来たいと言い出す。秘密の同居がバレてはいけない。
92点 ★★★★★★★★★☆
『カノジョの妹とキスをした』3巻を読んでみた!(※ネタばれあり)
前巻の感想では、晴香ちゃんにフォーカスして書かせてもらいました。
読者の嫌悪を一手に受ける超絶ヒール説。
↓これです。
3巻では、妹の時雨ちゃんを掘り下げ、
姉妹が構築している「いもキスワールド」の魅力を考えてみます。
時雨ちゃんの魅力を作る、4つの「ポジション」
読者はなぜ、時雨ちゃんに魅力を感じるのか。
「小悪魔」「肉感的」「なのに聖母」といった、キャラ造形の素晴らしさもありますが、
それより何より、時雨ちゃんの「ポジション」にこそ秘密があります。
主人公・博道くんから見た、時雨ちゃんはどういうポジションかというと
①「義妹である」
②「周りには秘密の同居人である」
③「彼女がいるのに好意を持ってしまった相手である」
④「彼女の妹である」
つよつよプロフィールです。
ふつう、どれか1個あれば、十分いかがわしい物語になるでしょう。
それが4つも!
いかがわしさの権化!!
この4つのポジションが、時雨ちゃんを、不道徳で、背徳的な存在に昇華しています。
言い換えれば、時雨ちゃんと付き合うことは、社会的に「良くない」ことなのです。
社会的に良くないというのは「抑制」であり、抑制こそが感情をブーストするものであり、ダメだダメだと思うほどに、時雨ちゃんを求めてしまうのです。
「博道くんが」じゃなくて、「読者が」!
時雨ちゃんの望みが叶ったとき、物語の魅力は消える?
さて、背徳的な立場こそが、時雨ちゃんの魅力の秘密だとしたら、それが無くなったとしたら?
つまり、博道くんが全てを晴香ちゃんに正直に話し、晴香ちゃんが素直に身を引き、博道くんと時雨ちゃんが世間公認の恋人同士になったら、この物語はどうなっちゃうんでしょう?
姉妹の反応をシミュレートしてみましょう。
晴香「博道くんと時雨が義兄妹になって、一緒に住んでるなんてびっくり!」
晴香「えっ、あたしより時雨を好きになっちゃったの!? ショックだよ!!ぴえん」
晴香「悲しいけど、二人を祝福するね!」
こんな「きれいな晴香ちゃん」見たくない!!
時雨「これからは、人目を憚らずにデートできますね。おにーさん」
時雨「みんなが私たちを祝福してくれてうれしいです」
時雨「すごく幸せです」完
こんな「大団円」いもキスじゃない!!
まとめ
晴香ちゃんは、「無自覚地雷」であってこそ輝き、
時雨ちゃんは、「イケナイ存在」であってこそ魅力的である。
という事実の再確認。
姉妹の相乗効果で生まれる背徳感を、ますます堪能できた3巻でした。
心の「永遠に覗いていたい修羅場」第1位!