読書感想文:『異世界料理道』29巻【書評・ラノベ】
『異世界料理道』29巻はどんなラノベ?
HJノベルス公式サイトより
アスタが森辺に来て、ちょうど1年。二人は、アイ=ファの手料理で誕生日を祝う。そして、宿場町の市場では、ついに生のギバ肉が売り出されることになった。
82点 ★★★★★★★★☆☆
↓1巻の感想はこちら
『異世界料理道』29巻を読んでみた!(※ネタばれあり)
脇役たちのドラマ
『ちはやふる』や『はじめの一歩』がすごいなと思うのは、ほんの脇役みたいなキャラにも、ちゃんと人生のバックボーンがあって、それぞれのドラマが描かれるんですよね。
この『異世界料理道』も、脇役たちを大事にする物語です。
しかも、作者さんがよほど気が長い人なのか、脇役ひとりとっても、長い巻数をかけてゆっくりじっくり人生ドラマが練られていきます。
29巻の最後の章、ライエルファム=スドラのエピソードは、まさにそうやって積み上げられた人物像が全部収束していくような素敵エピソードでした。
涙腺ぶっ壊れました!
初登場時に、ここまでの活躍を予想できただろうか?
ライエルファム=スドラの初登場は、おそらく6巻の家長会議です。
スン家からはもっとも離れた下座の果てで、あまり大柄でない男衆が立ち上がる。
「スドラの家も、ファの家の家長に賛同する。……スドラの家にだって、今少しの豊かさは必要だ」
(『異世界料理道』6巻)
29巻を読んだ後だと、この「今少しの豊かさは必要だ」というセリフの奥ゆかしさが沁みる……。
6巻の時点で、今の活躍を予想できた人がいたでしょうか。
ふつう、物語に後から加わるキャラクターというのは、初登場時に印象的なエピソードが用意されるのが定石ですよね。
でも、この『異世界料理道』では、その定石を外すことで、キャラクターが必要以上に芝居がからないというか、そのおかげで、少しずつ愛着が増す過程が、本物の人間関係みたいにリアルなんです。
今では、まるで親戚のおじちゃんのような親しみを感じてます。
そうやって、長い巻数をかけて親しみを増した上での、29巻『来し方と行く末』の章です。
語られた壮絶な過去エピソードは、読んでいて痛いほど。
それが、現在の情景に繋がって、収束していくラストはもうね。。。。
親戚のおじちゃん(違う)の過去と現在に号泣しました。
まとめ
ということで、長く続く物語ならではの感動をもらえた『異世界料理道』29巻でした。
考えてみたら、28巻のシーラ=ルウ結婚式でも、昔から知ってる親戚のお姉ちゃん(違う)が辿り着いた幸せに、胸がいっぱいになりました。
号泣しましたとも。
こないだ出席した従妹の結婚式よりも!