読書感想文:『才女のお世話』1巻【書評・ラノベ】
『才女のお世話』1巻はどんなラノベ?
HJ文庫公式サイトより引用
財閥のお嬢様・雛子ちゃんの誘拐に巻き込まれた一般庶民・伊月くんが、雛子ちゃんに気に入られて住み込みのお世話係になる。学校では才女、家ではぐうたらな雛子ちゃんをお世話する日々が始まった。
84点 ★★★★★★★★☆☆
『才女のお世話』1巻を読んでみた!(※ネタばれあり)
この「才女のお世話」の設定はこうです。
- ヒロインは財閥のお嬢様
- お嬢様の父親が厳しい
- そこに、一般庶民の主人公が現れる
HJ文庫公式サイトより引用
この設定を踏まえて、
私が予想したテンプレが以下です!
- お嬢様が、庶民の楽しみを知る
庶民:「なんだおまえ、ペヤング食ったことないのか?」
お嬢:「こ、こんなものが美味しいわけが……んんッ!?」 - お嬢様が、自分の境遇に疑問を持つ
父親:「ワシに従え」
お嬢:「今まで、全てお父様の言う通りにしてきた。でも…!」 - 庶民主人公が、ヒロイン父親と対峙
庶民:「いいかげん、あいつを自由にしてやれよ!」
父親:「!!……ワシが間違っていた…」 - お嬢様が、庶民主人公に恋する
お嬢:「逃がさないわよ。私のお世話係は、あなただけなんですからねっ」
父親:「ふ、二人の関係まで認めたわけではないからなッ!」
実際に『才女のお世話』1巻を読み終わってみると―――
ぜんぜん違いました。
私の予想の100万倍くらい良いお話でした!
うわっ…私の予想テンプレ、昭和すぎ…?
ポジティブな「大人の価値観」の肯定
私の予想テンプレの何がだめって、父親を敵役にしたところです。
じっさい、旧来の高校生を主役にした物語だと、「大人の価値観」って敵側なことが多いですよね。
「大人の思惑」 →ずるいごまかし
「組織の事情」 →体制側の理不尽
「秩序・礼儀」 →凝り固まった旧態
――みたいな。
この『才女のお世話』では、大人側の価値観をポジティブに肯定しているのが令和的です!
ヒロインの父親は、倒すべき敵ではなく、
組織の事情とは、全従業員の人生を背負う責任であり、
礼儀作法は、信頼を得るため、誠実さを見える形で示すために必要なものだと伝えています。
なかでも、「礼儀作法」の掘り下げが半端ない!
若いとき大事にしてるのって「自由」とか「物事の本質」であって、「礼儀」は優先順位が低いですよね。
ある意味、青春物語の逆ベクトルにあるものです。
でも、マナーを教えてくれるメイドの鈴音さんや、厳しくて優しいお嬢様・天王寺さんの言葉を繰り返し聞いてるうちに、読んでるこっちまで背筋が伸びてきます。
昭和的テンプレの直情的で無礼な庶民主人公じゃダメ、という気持ちになってきます。
本文より引用 画像は、HJ文庫公式サイトより引用「はっきりとした口調で言いなさい」
「自信は姿勢によって生まれるものでしてよ?」
「口にカップを近づけるのではなく、カップを口に近づけた方が優雅に見えましてよ?」
これだけ、礼儀やマナーの大事さが丁寧に書かれたラノベってそうそう無いです。
ぱっと思い出せるのは、『本好きの下剋上』でしょうか。
貴族になったローゼマインの所作の美しさに、ルッツやトゥーリが衝撃を受けるシーンとか良かったですよね。
まとめ
ということで、大人な価値観の丁寧な描写が気持ちいい『才女のお世話』でした。
青春物語テンプレの逆を行くだけでも挑戦ですが、それを読者がちゃんとポジティブに感じられるように描写されていることがすごい。
ラストの鈴音さん、かっこよかったです!
本文より引用 画像は、HJ文庫公式サイトより引用全員の説明を終えた鈴音は、最後に一言だけ付け加えた。
「なお、この四人は―――いずれもお嬢様のご学友です」鈴音の説明を聞いて、華厳は額に手をやった。
望みを叶えるために必要なのは、
熱血な大演説じゃない。
自己陶酔な土下座でもない。
実績を伴い、相手にも利益をもたらす交渉でした。
やっぱメイドさんしか勝たん!(←)