読書感想文:『りゅうおうのおしごと!』17巻【書評・ラノベ】
『りゅうおうのおしごと!』17巻はどんなラノベ?
GA文庫公式サイトより引用
プロ編入宣言で業界の反感を買うあいちゃん。スパコンが見せた100年後の将棋に絶望する八一。それぞれが苦悩の中で運命に抗う。
85点 ★★★★★★★★☆☆
『りゅうおうのおしごと』17巻を読んでみた!(※ネタばれあり)
この17巻で、八一が100年後の将棋と対局しますよね。
1か月間コテンパンに負け続け、精神も肉体も追いつめられる壮絶な対局。
VR世界にセッティングされた対局空間には、八一ひとりだけ。
スポンサーの天衣ちゃんすら入れない。
ところが、じつはもう一人、この空間には異分子が存在しています。
まあ……私です。
読者です。
なんか、場違いだよな!って思っちゃったんですよね。
私だって、駒の動かし方は知ってます。
でも、将棋の戦術となるとさっぱりです。
100年後の将棋とか言ってる場合じゃなくて、そのへんの小学生にも勝てません。
そんなゴミ(私)がね?
八一のすぐ横で、苦悩する姿を見てるという図。
お前(私)に「竜王」が「100年後の将棋」に挑む苦悩の何がわかる!?って思うじゃないですか。
ところが、わかるんですよ!
私のような将棋ピラミッド最底辺ゴミでも、その対局の熱さや、八一の苦悩がわかって共感してしまう!
『りゅうおうのおしごと!』のすごいところです!
↓例えばこのシーン
[kindle 35%]
《淡路》はこう言っているのだ。『矢倉も相掛かりも角換わりも全部終わってる』と。
↓読んでる私
深いところでは「矢倉ってなんだろ?」な私なのに、
文章を読んでる刹那には、ちゃんと状況を楽しめている!
どうしてでしょう?
なぜ、『りゅうおうのおしごと!』の対局は、将棋がわからなくても面白いのか?
トリックのひとつは、各「戦術」をRPGのスキルのように記号として扱っていることです。
ドラクエの炎呪文と言えば「メラ」です。
あれだって、もし実際に習得しようと思ったら「空気中の酸素をどうたらして炎の具現化イメージをどうたら」みたいな難しいコツがあるに違いありません!
でもゲームなので、難しいことには触れずに「メラを唱えると炎が出る」という部分だけ残しています。
このラノベも同様です。
「矢倉」や「相掛かり」や「振り飛車」が実際にどういう戦術かを理解してなくても、「メラ」みたいなスキルとして読者の頭に配置することで、戦術や棋譜じゃなく、攻防ドラマに集中して楽しめるわけです。
↓読んでるときの頭の中
このトリックによって、あらふしぎ。
将棋に疎い私でも、読みながら知ったような感想を吐けてしまうのです!
「相掛かりに持ち込めば、あいちゃんの土俵だぜ!」
「振り飛車は終わってなかったんや…!(号泣)」
みたいな。
なんてすごいラノベなんでしょう!
以上、将棋がわからなくても『りゅうおうのおしごと』の対局を楽しめる理由の考察でした。
たぶん、ちゃんと将棋の戦術を知ってる読者は、もっと深くこのラノベを楽しめているのでしょう。
でも、将棋に疎い私でも対局を楽しめる理由が、ちゃんとあったのです!
決して、あいちゃんペロペロ☆的な楽しさばかりをローリンローリンしていたわけではなかったのです!
まったく小学生は最高だぜ!!(←)