読書感想文:『クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった』1巻【書評・ラノベ】
『クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった』1巻はどんなラノベ?
ファンタジア文庫公式サイトより引用
陰キャぼっち高校生・名雲慎治くんは、わけあって一緒に暮らすことになった義妹・紡希ちゃんとのギクシャクした関係に悩んでいた。そんなある日、紡希ちゃんが家に連れてきた「ネット友達」は、同じクラスの美少女ギャル・結愛ちゃんだった。
79点 ★★★★★★★★☆☆
『クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった』1巻を読んでみた!(※ネタばれあり)
※今回の記事では、作中のセリフを多く抜粋して記載しているのでネタばれにご注意を。すでに読んだ人向けの記事です。
「陰キャと美少女」+「義妹」
「陰キャと美少女」+「義妹」
ラノベの2大テーマ両方盛りですね!
かつ丼ざるそばセット的な。
欲張りさんだな~、などと思いつつ読み始めまして。
読み終わってみると、
「陰キャがギャルと仲良くなった」
ではなくて、まさに、
「ギャルが義妹と仲良くなった」
という部分が重要だとわかります。
この「ラノベ的でキャッチー」と思っていたタイトルが、じつは的を得た優しいタイトルであることに気付いて嬉しくなりました。
つまり、ギャルが「家に」来ることが大事だったんです。
異分子が家庭に入ってきて大混乱!と思ったら、その家庭に必要なピースだったというのは、『とらドラ!』や、映画『E.T.』を例に挙げるまでもなく、多くの人が憧れるファンタジーです。
現実というのは厳しくて、家庭のことは自分たちで不器用にどうにかするしかない。
だからこそ、ラムちゃんやドラえもんが現れて、自分の日常に変化をもたらしてくれる物語に惹かれます。(最近だと、漫画の『ぽんこつポン子』とか好きでした)
このラノベでは、ギクシャクした兄妹に結愛ちゃんというピースがはまることで、兄妹間の関係も良くなってるんですよね。
そういうのって、友達でも家族でもあるよなーと共感できるお話でした!
↑頑固じじいとメイドロボのお話。全10巻完結済み。名作です。
プロレスねた満載
さて、このラノベについて語るべきは、もうひとつ。
それは、作中にびっしりと詰め込まれたプロレスねたの数々です!
「作者さんプロレス好きなんだな~」とほっこりします。
私も昔プロレスにハマってたので、ねたを見つけるたびに嬉しくて、いちいちメモまで取りながら楽しんでしまいました。
ということで、次の項に、私のメモを置いておきます。
1巻に登場したプロレスねたをリストアップし、せっかくなので簡単な説明も入れてみました。
あまりプロレスを見ない読者さんの参考になったら嬉しいです!
1巻に登場した「プロレスねた」リスト
※注
このリストは、当ブログが作品を読んで勝手に作成した非公式なものです。
なので、作者さんがとくにプロレスを意識せずに用いた語だったり、引用元が勘違いだったりと、作者さんの意図とは違う箇所があるかもしれないのでご了承ください。
↓では、始めましょう!
かたち変えてしまうぞ
[kindle 4%]
長州力の言葉。
[kindle 49%] の「かたちを変えようとしてただけだし!」も同様。
愛してま~す
[kindle 7%]
棚橋弘至の決め台詞。「シメ」のポテンシャルがすごく高い言葉で、興行の最後にこれを聞くと、観客は満足して帰路につける。レスラーは常に、こういう魔法の言葉を探している。
東京ドームのど真ん中
[kindle 7%]
東京ドームは、プロレスのビッグマッチ会場で、「ど真ん中」は、WJプロレス旗揚げ時のキャッチコピー「プロレス界のど真ん中を行く」から。
ガチ
[kindle 11%] 他
例:「ノアだけは――」
逃げない、負けない、あきらめない
[kindle 15%]
飯伏幸太のキャッチフレーズ。
サマーソルトキック
[kindle 18%]
初代タイガーマスクの技。
未来が見えちゃうんだね
[kindle 21%]
KENSOが言った「明るい未来が見えません」から。たぶん。
地面がマットになったみたいにふわふわ
[kindle 22%]
フットワークが重要なボクシングのリングマットは硬くて、倒れることが多いプロレスのリングマットは衝撃を吸収するために柔らかい。とはいえ、プロレスのトレーニングを受けてない人間がボディスラムされて平気な柔らかさではぜんぜん無い。
凶器的な
[kindle 23%]
プロレスの凶器として有名なのは、パイプ椅子、野球のバット、有刺鉄線、竹刀、フォーク、チェーン、ギター、消火器、画鋲、ホチキスなど。
日用品を凶器に使うのは、観客が痛みを想像しやすいというメリットがあるから。その意味じゃ、ラプンツェルがフライパンを武器にしてたのってプロレス的です。
自爆
[kindle 23%]
ムーンサルトプレスとかの空中技を、当たる直前に避けられて、自らダメージを受けること。
本当に本当だ
[kindle 24%]
カート・アングルの決め台詞「ホントにホントさ」から。こういう定番セリフを生み出すことの価値はすごく高くて、例えば「俺はベルトを獲ってみせる!」とだけマイクアピールするのと、そのあとに定番セリフ「ホントにホントさ!」がくっつくのでは、観客の盛り上がりが段違い。しかも、定番セリフをプリントしたTシャツも売れて全員幸せ。
魂を売り渡す
[kindle 24%]
サージェント・スローターが、一時期やってたけど不評ですぐにやめたギミック「フセインに魂を売った男」から。たぶん。
退場
[kindle 27%]
1、試合を終えた選手がアリーナから退出すること。⇔入場
2、選手に同行したセコンドの悪行がレフェリーに見つかって、アリーナから退出を命じられること。見どころはセコンドの地団駄リアクション。とても盛り上がる。
ノーリミット
[kindle 27%]
内藤哲也と高橋裕二郎が、昔組んでたタッグチーム名。
カウントダウン
[kindle 28%] 他
アントニオ猪木の引退に向けた一連の興行「ファイナルカウントダウン」から。
俺の左肩に両手を重ね、どこぞの古武術みたいな技をかけてきた
[kindle 31%]
ショルダークロー。アンドレ・ザ・ジャイアントとか大きい人がよく使う。
ギブアップ
[kindle 31%]
関節技や絞め技に降参することで、じつは和製英語。英語ではタップアウト。
ヴァー!
[kindle 31%]
佐々木健介の言葉というか発した声。敗戦後の声がそのまま文字起こしされて記事になり、健介の低迷時代だったこともあって、ファンからもマスコミからもいじられてた。私も面白がってたけど、今考えるとネットいじめの構図で、良くないことだなと反省。小橋建太との伝説の名勝負は、この3年後です。
俺の親父は豪快で陽キャでガチムチなプロレスの世界王者だった。
[kindle 31%]
レスラーであるお父さんに関する一連の記述については、「プロレスねた」というより物語そのものなので割愛しますね。
キレちゃいないよ
[kindle 37%]
長州力の有名な言葉。モノマネで使われることが多いけど、本来ギャグではない。
ホーガンや飯伏など、試合中に「キレる」ことで強くなるレスラーは多い。超サイヤ人と同様。しかし、この日の長州は、ただただ圧倒的な実力差で、キレるまでもなく試合を制する。このコメントによって、ファンがそれを再認識できた、いわば無双のカタルシスこそがこのコメントのかっこよさ。
圧勝で拍子抜けしてるんじゃなく、圧勝だからこそ自分の積み上げてきたものを熱く誇らしく感じている様子が伝わってくる。例えるなら、漫画『ハイスコアガール DASH』の名セリフ「コンフュを使うまでもない」のような高揚感。
↑中学校の先生になった小春ちゃんのお話。鳥肌モノの名著。
脚立だけじゃなくて蛍光灯も使うの?
[kindle 38%]
どちらもプロレスで多用される人気の凶器。脚立は、それ自体で殴るだけでなく、立てて上から飛び技したり、敵の首に引っ掛けたり、コーナーに立てかけて敵を投げつけるなど、ギミック装置として用途が多彩。蛍光灯は、攻撃時の「視覚化されたエフェクト効果」によって痛みが伝わりやすい。
パワーボムの姿勢
[kindle 39%]
「正面からの肩車」という、ラブコメにプロレスのエッセンスを取り入れた本作における天才の発想。
ちょうど親父のグッズで未開封のヤツがある
[kindle 43%]
お父さんのプロレスグッズ関連の記述も、プロレスねたとは違うかなと思うので割愛します。
時は来た
[kindle 51%]
橋本真也の言葉。感覚的にこの言葉を発した橋本と、自分たちを俯瞰して見ていた蝶野、というレスラーとしてのタイプの違いを知ることができた一幕でもある。
大一番の試合で黒パンから白パンに替えるようなことしなくていいのに。風にでもなってろ。
[kindle 52%]
鈴木みのるは、大事な試合のみ白いショートタイツを着用した。
「風になれ」が流れる入場は、海外の試合でも観客が日本語で熱唱するほど人気。
胴締めスリーパーホールド
[kindle 54%]
プロレスでも使われる技だけど、橋本が小川に負けた時や、船木がヒクソンに負けた時の決まり手なので、レスラーが格闘家に負けた記憶の中の象徴的な技という側面もある。
お前の思い通りにはさせないよ、絶対
[kindle 55%]
三沢光晴が言った「お前らの思い通りにはしねえよ、絶対」から。
その場にいた藤田和之の「誰が一番強いか決めればいい」という非常に新日本的な言葉との対比で、非常に全日本的な矜持を感じる言葉。
いいからね、殺っちゃって
[kindle 56%]
永田裕志が言った「いいんだね?殺っちゃって」から。
バックドロップ
[kindle 57%]
和製英語で、英語だとバックスープレックス。ちなみに英語のバックドロップは、日本でいうショルダースルーのこと。ややこしい。しかも、アメリカのプロレス関係者は日本語を面白がって、バックドロップやブレーンバスターといった和製英語をあえて使うという一周回った事例も増えている。ますますややこしい。
バカにしやがってこのやろ
[kindle 62%]
藤田和之の言葉。
思いっきりか? それがお前の!
[kindle 65%]
佐山聡の言葉。
逆水平チョップ
[kindle 76%]
ほとんどのレスラーが使う技だけど、一番有名なのはリック・フレアー。逆水平チョップと4の字固め、あとはいくつかの反則技だけで試合を作ることができた。
最凶の刺客
[kindle 78%]
漫画・アニメ「タイガーマスク」において、タイガーマスクに差し向けられた反則レスラーたちのこと。
ライジングサン・トーナメント覇者だから、世界ヘビーに挑戦できる
[kindle 80%]
G1優勝者がイッテンヨンで王者に挑戦できたり、ロイヤルランブルの優勝者がレッスルマニアのメイン戦に出場できるなど、大会をリンクする仕掛けは多い。作中の状況は、ニュージャパンカップ優勝者が、次期挑戦者になるような規模感でしょう。
技を放つその一瞬だけで、それまでの激闘がフラッシュバックする
[kindle 81%]
作中のこの必殺技に関する一連のくだりがとても好き。悩んで、体を削って、毎日積み上げて、ようやく手に入れる必殺技の輝きが、美しくも的確に描写されていて、読んでいて涙が出ました。
『ハイフライ・プレス』を封印してからが全盛期
[kindle 81%]
若い頃、高い身体能力を誇ったレスラーが、ケガをきっかけにスタイル変更を余儀なくされることは多い。というか、そもそもケガしないレスラーはいないので、すべてのレスラーが向き合う課題。むしろ腰を壊した後に名勝負を連発したHBKや、膝を壊してムーンサルトを多用できなくなった武藤敬司がシャイニングウィザードを生み出したエピソードなどが有名。
ちなみに、作中には名雲選手のイラストが無いんだけど、私が読むとき想像してた顔は武藤敬司でした。膝が悪い、若い頃映画に主演、海外でも尊敬されている、必殺技を封印、などの類似点から。次点で、かっこよくて頼もしいお父さんという希望的観測込みで潮崎豪。
トランキーロ
[kindle 81%]
内藤哲也の決め台詞。
プロレスってさー、八百長なんでしょ?
[kindle 83%]
作中で描かれているとおり、プロレスファンが好まない案件。半端な「ラノベ定義」が、ラノベファンのひんしゅくを買うのと同じで、誰かが好きなものを簡単に定義づけるのは危ういこと。たくさんのレスラーや関係者が人生を賭け、多くのファンが夢中になっているコンテンツを「八百長」の一言でくくるのは無理があるというもの。同時に私自身も、よく知らないコンテンツを表面的な情報で結論付けないように気をつけたいです。
※脱線するけど、『神様のメモ帳』『楽園ノイズ』作者の杉井光先生が書いたラノベ定義は、ちょっとレベルが段違いで凄まじかったです。どうしてこんなすごい文章かけるの。。。
↓これです
ホーリー嫉妬
[kindle 84%]
海外のプロレス興行において、観客がおこなうチャント「ホーリーシット」から。
言っちゃうぞバカヤロ
[kindle 86%]
小島聡が串刺しエルボー後に発する定番セリフ「いっちゃうぞバカヤロー!」から。突発的に発生するアクションよりも、予兆があるアクションのほうが観客の興奮を生みやすいという心理ロジックから、このように技とセリフを組み合わせた定番ムーブが生まれ、様式美へと昇華していく。
正直スマンかった
[kindle 87%]
佐々木健介の言葉。
ジャベ
[kindle 78%]
ルチャリブレ(メキシコのプロレス)における関節技のこと。日本では、ルチャの魅力を多く取り入れた団体ドラゴンゲートによって「ジャベ」という呼称が広く知られるようになった。
毒霧
[kindle 88%]
口から霧状に毒を噴いて敵の目を潰す技。グレートムタが有名。蛍光灯の項でも触れたけど、格闘ゲームと違って衝撃時のエフェクト等が存在しない現実世界において、緑色の毒霧が噴出される視覚的インパクトは絶大である。
シングルのヘビー級王者と、デビューしたばかりの若手が何の脈絡もなくメインで試合させられたら
[kindle 94%]
映画『ロッキー』を例に挙げるまでもなく、作中でお父さんも反論しているとおり、ミスマッチの名勝負はプロレスに存在する。「圧倒的実力差」「若手を侮る王者」という構図から、弱者側が見せる気迫は観客の心を打つ。『ドラえもん』6巻における、のび太がジャイアンに勝った喧嘩は好例。
ブーイング
[kindle 94%]
もともとブーイング文化が無かった日本では、礼を失する行為と思われることも多いが、実際のところプロレスにおけるヒールレスラーは、日々ブーイングをもらうために知恵をしぼっており、ブーイングを送ることこそがヒールレスラーへの正当な評価とも言える。レスラーが本当に困るのは、ヒールへの声援、ベビーフェイスへのブーイングである。これを「ミックスドリアクション」と呼ぶ。
やる前から負けること考えるバカがいるよ
[kindle 94%]
アントニオ猪木の「出る前に負けること考えるバカいるかよ」から。
俺たちの恋人関係はあくまでギミック
[kindle 94%]
抗争を盛り上げるのは「闘う理由」であり、人が闘う理由として「恋愛」は外せない題材である。なので、プロレスでは恋人関係のギミックが多用される。とはいえ、恋人ギミックで長い時間一緒に仕事するうちに本当に結婚するカップルも少なくないのは、職場結婚が多いのと同じ原理である。
【本当の夫婦】
トリプルH&ステファニー、佐々木健介&北斗晶など
【ギミックの夫婦】
戸澤陽&タミーナ、エッジ&ヴィッキーゲレロなど
『シンにぃと結婚する権』は、結愛さんにあげる
[kindle 94%]
DDTプロレスの「いつでもどこでも挑戦権」や、WWEの「マネーインザバンク」のように、プロレスにおいては、視覚化された「権利」を奪い合ったり譲渡したりするケースがままある。
娯楽スポーツ界最高の美技
[kindle 95%]
本来は、ロック様の必殺技「ピープルズエルボー」を指す煽り文句。もともと、ただのエルボードロップの準備動作を増やすというロック様のジョークだったが、観客が盛り上がったので毎試合使い続け、数百試合を経て、動き・間・実況・カメラワーク等も含めて完璧な様式美が完成。さながら、イチローが打席に入る際のルーチンのごとく、気が遠くなるほど繰り返された所作というのは、それだけで神々しい輝きを持つ。
↑現在ロック様は、映画俳優ドウェイン・ジョンソンとして活躍中。
前言撤回ほどプロレスラーらしいものはねぇだろうが
[kindle 95%]
レスラーが大事にしているのは「観客の熱狂」で、それを生み出すためなら、時として自分の人生にも嘘をつく。
まとめ
以上、『クラスのギャルが、なぜか俺の義妹と仲良くなった』1巻に登場した、プロレスねたリストでした!
リスト長っ
言葉遊びあり、物語にかけた表現ありで、よくもここまでびっしりと詰め込んだものです。
ひさびさにプロレス見たくなってきちゃいました。
さて、物語もプロレスねたも楽しいこのラノベだったのですが、ひとつだけ。
結愛ちゃんが現れたことによる「環境の変化」に対して、最後に何かひとつでも、主人公・慎治くんの「能動的な変化」が描かれていたら嬉しかったです。
スティーブ・オースチンも、内藤哲也も、悩みに悩んだ末にきっかけをつかんで「変わった」。
その物語にファンは惹かれます。
とはいえ、まだ続刊がある物語なので。
今後の慎治くんの動向に注目しつつ、2巻を読むのが楽しみです!
では今回はこのへんで。
記事を読んでくれたみなさん
愛してまああす
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